デジタル技術が発展してDX推進に取り組む企業が増えてきましたが、SDGsの取り組みに活かすことはできるのでしょうか?結論からお伝えすると、DXとSDGsは密接に関係しており、DX推進に取り組めばSDGs目標を達成できます。
今回はDX推進に取り組み、SDGs目標を達成する方法をご紹介します。この記事を読めば、DXとSDGsの関係性や取り組み方までわかるようになるため、ぜひ参考にしてみてください。
DXとSDGsの関係性
まずは、DXやSDGsの概要を説明した上で関係性について解説します。
DXとは
DX(Digital Transformation)とは、社会にデジタル技術を浸透させて、人々の生活をより良いものにしていくデジタル変革を指します。
2004年にウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱されました。彼が提唱したDXの定義は「進化し続けるテクノロジーで人々の生活を豊かになること」です。
ビッグデータやAIなどのデジタル技術を活用して、業務プロセスを改善するだけではなく、業務変革(新しい業務のやり方を見つける)することをいいます。
ビジネス環境が変化し、競争が激化する時代の中で勝ち抜いていくためには、業務変革が欠かせません。そのため、さまざまな企業がDX推進に取り組んでいます。
SDGsとは
SDGs(Sustainable Development Goals)とは、国連サミットで採択された国際目標です。
現世代の欲求も満たしながら将来に向けたより良い生活を目指していくこと(持続可能な開発)が目標として定められています。
17のゴール(目標)と169のターゲット(具体的目標)から構成されています。
【SDGsのゴール】
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基礎をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任 つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
SDGsは発展途上国、先進国など関係なく世界全体で取り組むものです。地球温暖化など社会課題に対する危機意識が向上してSDGsの重要性が理解されるようになり、日本企業も積極的にSDGsに取り組んでいます。
SDGsについて詳しく知りたい場合は、関連記事を読んでみてください。
関連記事:『SDGsとは?目標達成に向けて企業が取り組めることや先進事例を紹介』
DXとSDGsの関係性
DXとSDGsは「社会を豊かなものにする」という目標が似ています。経済的・社会的な豊かさという意味では、目指すものは同じです。
しかし、SDGsの方がより幅広い意味を持ちます。したがって、SDGs目標を達成するための1つの方法としてDX推進があると捉えると良いでしょう。
SDGsに取り組むためのDX推進方法
SDGsに取り組むためにDX推進への取り組みを考え始めた方は、以下の手順で取り組んでください。
- DX推進を決意する
- DX推進のビジョンを立てる
- 従業員からDX推進の同意を得る
- DX推進部門を設置する
ここでは、各手順について詳しく解説します。
DX推進を決意する
SDGsに取り組むためにDX推進する場合は、企業文化や組織の変革が必要となります。そのような変化を恐れない経営者の意思が必要です。
組織変革をしなければいけない場合は、変革に対する社内抵抗が起きるかもしれません。そのような場合に、経営者はリーダーシップを発揮してDX推進していきます。社内抵抗が起きても説得して、DX推進に取り組む覚悟が必要になります。
DX推進のビジョンを立てる
次にDX推進のビジョンを立てるために「DXジャーニーマップ」を作成しましょう。DXジャーニーマップとはDX推進の設計図を指し、以下のような内容がまとめられています。
DXジャーニーマップ
- 現在の課題、解決策
- 設計図(DX推進の目的、目標、指標、業務プロセス、デジタルツール、CX)
- ステークホルダーマップ
- デジタル連携図
- デジタル投資シミュレーション
DXジャーニーマップを作成する場合は、業務に詳しい人とDXの知識を持つ人を集めて作成しましょう。DX推進の知識を持つ人がいない場合は、外部のコンサルティング会社に相談するのも1つの選択肢です。
従業員からDX推進の同意を得る
DXジャーニーマップを作成したら、従業員に公開をしてDX推進の同意を得ましょう。従業員の同意を得ずにDX推進に取り組み始めると、不満を持つ人が出てきます。なぜなら、ITを学ぶことが負担になるためです。
また、組織変革などで働き方が変わることに、難色を示す人もいるかもしれません。
そのため、DX推進に貢献した人物を表彰するなど協力してもらえるような仕組みをつくって、従業員から同意を得るようにしましょう。
DX推進部門を設置する
従業員からDX推進の同意を得たら、DX推進部門を設置します。DX推進部門は、デジタル技術を活用して業務変革を行う推進と窓口の役割を担います。これらの業務に適した人材を配置しましょう。適材な人材がいない場合は、DX関連企業に委託するのも1つの選択肢です。
SDGs目標達成に活用したいDX技術
SDGsに取り組む際に活用したいDX技術には「IoT」「ビッグデータ」「AI」「ICT」「RFID」があります。
IoT
IoT(Internet of Things)は、モノにインターネット接続して制御するための仕組みをいいます。IoTは「モノ」「センサー」「ネットワーク」「アプリケーション」の4つの要素で構成されています。モノのセンサーが検知した情報をデータ化して、ネットワーク経由でアプリケーションにデータ送信されます。IoTを活用して実現できることは以下の通りです。
- 離れたモノを遠隔操作する
- 離れたモノの状態を遠隔監視する
- 離れたモノ同士でデータを送受信する
AI
AIとは人工知能(人間の知的な振る舞いの一部をソフトウェアを用いて人工的に再現したもの)をいいます。AIは「認識系」「会話系」「予測系」「実行系」に大別されます。
認識系 |
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会話系 |
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予測系 |
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実行系 |
|
RPA
RPA(Robotic Process Automation)は、パソコンの作業を自動化できるエンジンです。
RPAに処理手順を登録しておけば、業務処理を自動化できます。請求書や経費の処理など、繰り返し入力するような定型作業を得意としています。
RFID
RFID(Radio Frequency Identification)は、電波を用いてRFタグデータを読み書きできるシステムです。
バーコードの場合は1枚1枚スキャンしていき、スキャン作業が大変ですが、RFIDに切り替えれば複数枚のタグを一括スキャンできます。電波が届く範囲であれば、タグデータの読み取りが可能です。棚卸し作業や在庫管理、トレーサビリティなどの効率化でRFIDが活用され始めています。
関連記事:『【更新】RFIDとは?仕組みや特徴、最新の活用事例をわかりやすく解説!』
DX推進でSDGsに貢献している企業事例
SDGs目標達成に活用したいDX技術をご紹介しましたが、貢献企業はどのように取り組んでいるのでしょうか?ここでは、DX推進でSDGsに取り組んでいる企業事例をご紹介します。
AIで運行スケジュールを立てて燃料消費量を削減
オーストラリアのスタートアップ企業のThe Yield社は、カキの養殖の生産性を上げるAIツールを開発しました。二枚貝の牡蠣は水質を改善する脅威のろ過能力を持っていますが、雨が降ると汚染物質を排出するため、雨天時は牡蠣の養殖ができません。
このような理由により、牡蠣漁船の運行スケジュールが立てにくいという課題がありました。この問題を解決すべくAI需要予測を取り入れることで、スケジュール通りに運行できるようになり、牡蠣漁船の燃料消費量を削減することに成功しています。
国内でも、東京大学とシャープ株式会社が協力して「スマートかき養殖」の実証実験を行っています。
IoTを活用して在庫管理を行い過剰在庫を撲滅
NPO法人フードバンクイコロさっぽろは、企業や農家、個人宅から出た食品ロスを必要とする方に届けているNPO法人です。
4拠点の倉庫を持っており、毎月4tの食材の寄贈がありますが、日によって寄贈量は異なります。ボランティアのフードドライブ担当者が、1日にどの程度の食材が寄贈されたかを把握しにいくと、予想より食材量が少なかった場合は配達料が赤字になります。なぜなら、配達スタッフに対してデリバリー料金を支払っているためです。
そのため、「どの程度の食材が集まっているか」を把握して、集荷計画を立てようと閃きました。現在はIoTを活用して在庫管理を行い、在庫の過不足を撲滅して食材ロス削減に成功しています。
RPAで年間3,000時間の労働時間削減を実現
SBS即配サポート株式会社は、1都3県を対象に軽トラックを利用した小口荷物の配送などを行っている物流会社です。同社は顧客満足度を上げるために、さまざまな配送伝票を受け付けており、そのような柔軟さが強みとなっています。
1日300通ほど、対象となる出荷依頼メールがありました。RPA導入前はメールを1通ずつ目視して指定フォルダにアップロードしていましたが、大きな負担となっていました。このような問題をRPAで作業を自動化し、年間3,000時間の労働時間を削減しています。
RFIDでトレーサビリティを追跡する
米国のAvery Dennison社をはじめ、生産から消費、リサイクルのトレーサビリティができるデジタルツールが開発され始めてきています。
従来のサプライチェーンのあり方を再構築し、流通経路の透明性を確保できるため、材料の調達から生産、消費やリサイクルまで追跡可能になりました。アパレル、化粧品、医薬品、消費財、食品、物流業界など幅広い業界に導入されはじめ、SDGs目標を達成できるツールとして注目を浴びています。
国内ではRFルーカスがRFIDを活用したサービスを提供しているためご相談ください。
RFルーカスに関するお問い合わせはコチラ
まとめ
SDGs目標を達成するためにDX推進する企業が増えています。DX推進で業務変革しSDGsに貢献すれば、企業イメージの向上が期待できます。その結果対外交渉がうまくいきやすくなり、ビジネスチャンスの獲得につながるでしょう。
今回は、AIやIoT、RFIDなどのデジタル技術を活用してSDGsに取り組んでいる事例をご紹介しました。ぜひ、この記事を参考にしながら、SDGs目標達成のためにDX推進に取り組んでみてください。