「働き方改革」という言葉を耳にするようになって久しいですが、貴方の会社で働き方改革は進展しているでしょうか?
行政府も指摘する通り、現在非常に低コストで利用可能なITツール群は働き方改革を大きく推し進め、会社の形を変革させるポテンシャルを秘めています。
本稿では、様々な仕事効率化ITツールを紹介し、これらITツールが働き方改革にどのように寄与するのかを解説します。
働き方改革について
まず、働き方改革とは何かを確認していきましょう。
「働き方改革」とは、働く人々が、「それぞれの事情に応じた多様で柔軟な働き方を選択できる社会を実現する」ための労働環境の改善と位置付けられます。
参考資料:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)の概要(厚生労働省)
上記目的のため、具体的には、
・長時間労働の是正
・多様な働き方の実現
・雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
などを行います。
こうした方針のもと法整備が進められ、各企業に対しては企業構造の改革が推奨されています。
働き方改革でITツールを導入する目的・メリット
働き方改革関連の法整備が進むにつれて、企業としては否応なく変革を求められるようになりました。労働者を働かせることができる時間が削減された結果、業務効率の向上は欠かせないものとなっています。
これまでに存在した無駄を省き、効率化を進めるために、各社様々な取り組みを実施しています。
➡︎(Link to /work-style-reform-productivity)
その中でも、近年急速に拡大するITツール群は、仕事効率化を大きく推進することが期待されます。ここで言うITツールとは、業務効率化に用いるソフトウェアのことです。行政府も働き方改革推進のために、ITツールの活用やデジタル化を推奨しています。
参考資料:働き方改革実践の手引き ~企業と社員のための働き方改革へ~ (厚生労働省)
ITツールが働き方改革に大きな影響を及ぼす最大の理由は「従来の物質的制約から労働を解放する」ためです。
これまでは、仕事を進める上で人と人が直接顔を合わせて意思疎通を図る必要がありました。しかし、各種ビジネスチャットツールやビデオ通話機能は、各自が別々の場所にいながら、これまでより円滑な意思疎通を実現します。
紙ベースの資料を廃し、情報をオンラインで共有することで、情報を検索するための時間は大幅に削減されました。必要な情報へのアクセスはこれまでよりスムーズになります。
各自の仕事の進捗状況をより正確に、細かく管理することも可能です。
ITツールは、物質的制約に縛られた業務形態から労働者を開放することで、無駄を省き、質を落とさず労働時間を削減できます。
業務効率化のためのITツールの種類
以下では、働き方改革を実現するために活用されるITツールについて、具体的な名前を挙げて紹介していきます。
社内情報共有
業務効率化のためのITツールにも様々な種類がありますが、最も多いのは「社内情報共有を効率化するためのツール」です。
ビジネスチャット
ビジネスチャットは従来の社内メールの代替となるソフトウェアです。メールのように1通1通開封して中の文章を読む必要がなく、グループに所属する全員の発言を一覧できるため、意思の伝達が円滑になります。
pptファイルやcsvファイル程度(5GB以下)の容量であればチャット上にアップロード できるため、資料やデータの共有も容易です。
代表的なビジネスチャットツールとしては以下のソフトウェアが挙げられます。無料で使えるものがほとんどです。
Chatwork、Slack、Microsoft Teams
オンラインストレージ
大容量のデータファイルを共有したり、大量のファイルを管理したりするために用いられるのが、オンラインストレージです。
多くのオンラインストレージは、情報を共有するユーザーを選択できる機能を持っています。必要な人が必要に応じて情報にアクセスすることができ、情報を探す労力も大きく低減できます。
以下が、代表的なオンラインストレージです。こちらもほとんどのソフトウェアが無料で使うことができますが、容量が足りなくなった場合にはストレージを購入する必要があります。
Dropbox、Box、Google Drive
グループウェア
グループウェアとは、上述した「ビジネスチャット」や「 オンラインストレージ」、また「 勤怠管理システム」や「スケジュール管理システム」など、業務効率化のためのツールをひとつにまとめたパッケージやプラットフォームです。
代表的なグループウェアとしては以下が挙げられます。
G Suite、サイボウズ Office、Microsoft 365、Sococo、Remotty
テレワークの推進
コロナ禍におけるニーズの高まりから、急速に導入が進められたのがテレワーク(在宅勤務)です。以下では、テレワーク推進に大きく貢献したソフトウェアを紹介します。
Web会議システム
テレワーク推進に大きく貢献したのは、web会議システムです。多人数間で音声と映像を共有し、オンライン上で顔を合わせて会話することを可能にしました。
今も昔も、最も短時間で意思を伝達する方法は顔を合わせて会話をすることです。Web会議システムは、顔を合わせて会話をする際に「直接会わなければならない」という物質的制約を取り払いました。通信設備の拡充によって、オンライン会話におけるタイムラグは小さくなっており、web会議は現実の会議により近づきつつあります。
代表的なweb会議システムとしては以下が挙げられます。
Skype for Business、Zoom ミーティング、Google Meet(旧ハングアウトMeet)
勤怠管理システム
国内企業の多くは、成果ベースで報酬を支払うことはせず、働いた時間に応じて給与が支払われます。在宅勤務では労働環境における平等性が崩れるため、不満の噴出は避けられません。
勤務時間に応じた給与計算をきちんと実施し、労働者間の不平等を是正するためには、決められた時間、きちんと仕事をしているかを調べ、管理する必要があります。平たく言えば、離れていてもサボらせないシステムが必要です。
こうした目的に用いられるのが勤怠管理システムです。代表的なソフトを以下に示します。
ジョブカン勤怠管理、jinjer勤怠、e-就業ASP
ERP(Enterprise Resource Planning)
ここまで、労働者にとって便利なITツールを紹介してきましたが、経営者視点でも役立つITツールがいくつも開発されています。
ERP(Enterprise Resource Plannning)は、企業全体の経営資源を統合的に管理し、経営の効率化を図る考え方や、それを実現するためのソフトウェアを指します。
資材・製品・設備・生産能力などの事業資源に関する情報から、受発注・給与・顧客情報など、あらゆる情報を統合的に管理します。
テレワークやフレックス制度導入によって、労働者間のスケジュール調整や作業の共有はより難しくなりました。それら調整を手作業で行うことは最早不可能です。ERPは経営者の視点から、スケジュールの調整や人的資源の配分を手助けします。
現場の自由度と企業の利益をマッチさせ、経営資源を最大限に有効活用することが可能です。代表的なERPパッケージは以下のものが挙げられます。
SAP、クラウドERP freee、ORACLE NET SUITE
ITツールを導入した働き方改革の事例
以下では、ITツールを利用して働き方改革に成功した企業の事例を紹介します。
厚生労働省HPには、以下に挙げる例以外にも様々な業種の事例が掲載されています。より詳しく知りたい方はご参照ください。
弁護士法人ファースト法律事務所
一般的な弁護士の業務は、事務所を訪問した顧客との相談です。しかし、従来の形では、相談するためにスケジュールを調整し、事務所に赴く必要があります。これでは顧客が顧客が気軽に法律の相談をできません。
弁護士法人ファースト法律事務所では、Chatworkを使って気軽に法律相談できる環境の整備を進めました。
Chatworkは無料で利用できるため、顧客側も導入が簡単です。結果として、顧客側は従来よりも気軽な相談がしやすくなります。Chatworkは発言について記録も残るので、電話や直接のやり取りと違って、トラブルが発生しにくいことも特徴です。
参考資料:ITで働き方は本当に変わる? クラウドツールで実現した「場所に囚われない」弁護士業 | SELECK [セレック]
サイボウズ株式会社
IT系企業においては、他業種よりも積極的に働き方改革が推進されています。中でも、サイボウズ株式会社は、ITツールの利活用に前向きで、得られたノウハウを他社へ還元する事業も進めています。
サイボウズが業務のIT化に成功した背景には、社員からの要望抽出や、社内制度への継続的なフィードバックがあります。
働き方改革を始めた当初には、成果物の品質低下やモラル低下が発生しました。また、あまりに監視が強いと、テレワークをしたくなくなるという問題もありました。
これに対し、サイボウズでは、働く場所や時間を自己申告制にし、各個人の自由度と企業利益のバランス調整を行っています。
テレワークに必要な環境整備に関しても、試行錯誤を続けました。様々なweb会議ツールを検討した結果、ある程度コストをかけて、仕事の質を落とさないような高水準のテレワーク環境を整備するという結論を得ました。
働き方改革のための社内制度作りは、ITツールの導入と同じくらい重要で、両輪として進めていかなくてはなりません。
参考資料:サイボウズの「テレワーク」に関する情報を公開します
参考資料:働き方改革、楽しくないのはなぜだろう。|サイボウズ式
まとめ
近年導入が進むITツールは働き方改革を大きく進展させるポテンシャルを秘めています。一方で、ITツールを導入しても、社員と経営者の利益が上手く噛み合わないケースが散見されます。
先進的な企業の事例に学び、自社に合った形を模索することは、働き方改革の第一歩となるでしょう。