製造業における在庫管理の課題と改善策を具体的に解説!

在庫を抱える企業にとって、在庫管理は重要な業務の一つであるといえます。製造業についても例外ではなく、適切な在庫管理ができなければ、販売機会の損失やキャッシュフローの悪化に繋がる可能性が高くなります。

 

では、製造業の在庫管理を効果的かつ効率的に行うにはどのような点に注意すればよいのでしょうか。今回は、製造業の在庫管理の特徴や、多くの企業が直面している課題、在庫管理業務を適正化するための改善策について、詳しく解説します。

 

在庫管理とは

在庫管理とは、商品や資材などの企業資産(在庫)を適正な数量、品質で管理する業務を指します。在庫が指し示すものは、業界業種によって異なりますが、製造業の場合は、完成品だけでなく、部品や原材料、仕掛品、半製品といった、製造過程で取り扱う全てのものが対象となります。

 

在庫管理は、顧客の需要に対して過不足なく製品を供給すること、欠品などによる機会損失や過剰在庫による無駄なコストの発生を防ぎ、企業の利益を最大化することを目的としています。

 

そのため、必要な時に必要な量を必要な場所へすぐに供給できるよう、在庫の所在や数量、状態などを正確に把握し、管理、維持することが重要とされています。

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製造業における在庫管理の特徴

製造業とその他業種の在庫管理にはいくつか違いがあります。ここからは、製造業の在庫管理の特徴である「生産形態」と「在庫の種類」の2点について、詳しく解説します。

 

生産形態

製造業の生産形態は、「組立・加工製造」と「プロセス製造」の大きく2種類に分けられます。それぞれの特徴について確認していきましょう。

 

組立・加工製造

組立・加工製造は、主に個体部品を加工、または、組み立てることで製品を生み出す製造スタイルです。ディスクリート製造とも呼ばれ、自動車や家電製品、電子部品、衣類や紙加工品などが該当します。

 

プロセス製造

プロセス製造は、主に原材料となる流体の特性や性質を変化させることで製品を生み出す製造スタイルです。完成品だけでなく、素材の製造に関わる企業も多く、化学、石油、鉄鋼、薬品、繊維など、幅広い分野でプロセス製造が行われています。

 

在庫の種類

製造業では、製造過程によって在庫の種類が「部品・原材料(素材)」「仕掛品」「完成品(製品)」と変化します。それぞれの在庫の特徴について解説します。

 

部品・原材料(素材)

製品を製造するために必要な基本的な部品や原材料を指します。ねじやナットなどそのまますぐに使えるものが「部品」、金属やプラスチックなど加工しなければ使えないものが「原材料」です。

 

仕掛品

仕掛品とは、製造途中で未完成かつ、そのままでは販売や出荷ができない状態の製品を指します。たとえば、焼成前のパン生地や、画面を取り付ける前のスマホやタブレット端末などが仕掛品にあたります。

 

また、仕掛品と混同されやすい言葉に「半製品」があります。半製品は、製品として販売可能な状態であるものの、企業にとっては製造途中であるものを指します。たとえば、ラベルが貼られていない飲料などが半製品にあたります。

 

完成品(製品)

完成品は、製造が完了し、顧客に販売可能な状態の製品を指します。完成品は、顧客や小売店へ出荷されるまで、在庫として保管されます。

 

製造業が抱える在庫管理の課題

製造業が抱える在庫管理にはどのような課題があるのでしょうか。詳しく確認していきましょう。

 

調達リードタイムの長期化

リードタイムとは、発注から納品までの全ての工程にかかる所要期間を指します。製造業の場合は、一般的に、「製造リードタイム(生産リードタイム)」「設計リードタイム」「受注リードタイム」「調達リードタイム」など、工程ごとに細かく分けてリードタイムを考えます。

 

さまざまなリードタイムの中でも特に、調達リードタイム(製品の製造に必要となる部品や原材料の発注から納品、受入検査完了、現場への納入までの所要時間)は、製造業の在庫管理に大きな影響を及ぼします。

 

調達は生産工程の最上流工程にあたるため、調達リードタイムが長期化すると、その後の製造や出荷の遅延に繋がります。特に製造品を調達するケースや、海外から必要な部品、原材料を調達するケースでは、調達リードタイムが長期化する可能性が高くなります。そのため、機会損失を避けたい企業の中には、部品や原材料を早い段階から余分に在庫として抱える決断を下すところも多くあります。

 

調達リードタイムの長期化は、結果として、製造業の過剰在庫や、紛失等による在庫差異を招く原因となっています。

 

過剰在庫によるキャッシュフローの悪化

在庫は費用を払って仕入れる企業の資産です。資産に分類されますが、現金のように流動性はなく、在庫商品が売却できない限り、資金化できません。

 

つまり、企業が過剰に在庫を抱えてしまうと、仕入れによる支出だけが増え、企業が自由に使える資金が減っていく状態(キャッシュフローの悪化)に陥る可能性が高くなります。

 

過剰在庫の状態が続き、キャッシュフローの悪化が深刻化すると、運転資金の不足、経営悪化など、企業経営に甚大な影響を及ぼします。

 

ピッキングミスの発生

ピッキングとは、倉庫や工場に保管された商品の中から、伝票やリストに従って必要な商品を集める業務です。ピッキングは在庫管理において重要な業務であり、正確かつ効率的なピッキングを行うことで、生産性向上や顧客満足度の向上などさまざまなメリットが見込めます。

 

しかし、扱う製品の種類や数の多い製造業では、ピッキング作業にミスが発生することも少なくありません。特にピッキング作業のルールが明確にされていない場合や、商品のロケーション管理が徹底されていない場合、ピッキングミスが起こりやすいので注意が必要です。

 

その他製造業特有の課題

ここまで紹介した課題点以外にも、製造業の在庫管理が抱える課題には、以下のような点が挙げられます。

 

  • 管理すべき在庫の大きさや重さ、形状がバラバラで正確な数が把握しにくい
  • 管理すべき部品の品目、数量が多いため、管理に時間を要する
  • 人手不足により、在庫管理や棚卸業務を行う現場従業員の負担が大きい
  • 業務が属人化しやすく、業務負担が特定の従業員に集中してしまう

 

在庫のチェック、発注、棚卸など、在庫管理には多くの業務があります。特に、多量かつ多品目の在庫を抱える製造業では、在庫管理は非常に工数のかかる業務であり、担当する現場従業員に重い負担を強いる業務ともいえます。

 

製造業の在庫管理を最適化するためのポイント

製造業の在庫管理を最適化するために大切なポイントは以下の通りです。

 

  • 見える化
  • 自動化
  • 一元化

 

それぞれについて詳しく解説します。

 

見える化

在庫管理の見える化とは、保管場所や数量など、在庫の状況を、誰でも把握できるようにすることを指します。

 

在庫管理の見える化を実現する方法にはさまざまなものがありますが、近年高い注目を集めているのが、RFIDをはじめとしたIoT技術の活用です。

 

たとえば、製品や部品にRFIDタグをつければ、在庫の保管場所や数量がすぐにわかり、仕掛品がどの製造工程にあるかも一目で把握しやすくなります。また、在庫管理システム等を活用し、在庫状況などのデータを可視化すれば、適正在庫の維持や需要予測分析にも役立ちます。

 

自動化

在庫管理の自動化とは、システムやツールを導入し、これまで手動で行っていた在庫管理に関わる業務を自動化することを指します。

 

入出庫や発注、棚卸、返品業務など、人手や時間のかかる業務を自動化すれば、ヒューマンエラーの防止や、業務の属人化解消に繋がります。

 

自動化を行うためには、在庫管理システムやRFID、画像認識システムなどの導入が有用です。近年では、AIを活用した在庫管理や、IoT機器とロボットを組み合わせた在庫管理も注目されており、導入を進める企業も増えています。

 

関連記事:在庫管理を自動化する方法5選!選び方も含めて徹底解説!

一元管理

在庫の一元管理とは、倉庫や工場といった各拠点の在庫状況をまとめて管理し、一括で処理することを指します。これまでバラバラに管理していた在庫情報が一元的に管理できるようになるため、業務効率化や人件費・作業コストの削減にも繋がります。

 

また、各拠点の正確な在庫状況がすぐに把握できるため、欠品による販売機会損失の防止や、クレームや問い合わせ等への迅速な対応ができる点もメリットといえます。

 

在庫の一元管理を行うためには、各拠点への在庫管理システムの導入が不可欠です。在庫管理システムには、製造業に特化したタイプのものや、必要最低限の機能を備えたものなど、サービスによってさまざまな特色があります。在庫管理システムを検討する際は、自社の扱う製品の特徴や種類、拠点数などを考慮して、現場従業員が使いやすいシステムを選択することが重要です。

 

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まとめ

製造業が抱える在庫管理の課題を解決し、適正な在庫管理を行うためには、在庫の「見える化」「自動化」「一元管理」などの取り組みが欠かせません。

 

近年では、在庫管理システムや、RFIDをはじめとしたIoT機器など、さまざまなシステム、ツールが誕生しています。自社の抱える課題や扱う在庫の種類、特徴などを踏まえ、適切なシステムやツールを導入することで、より効率的な在庫管理を行える可能性が高くなります。

 

さまざまなサービスがあるため、自社にどれが適しているかわからない、課題解決の手段としてどのサービスを選択するのが最適か知りたいという方は、専門家へ相談するのもおすすめです。