競合他社が新商品や新サービスを販売するなど、ビジネス競争が激化している現代において、企業競争力を上げたいと考えていませんか?企業競争力を上げるために、DX推進が注目を浴びています。
しかし、多くの経営者が「どのようにDX推進に取り組めばよいかわからない…」「DX推進のリソースを確保できない…」と悩みがちです。このような悩みを抱えた方向けに、DX推進の取り組み方について解説します。この記事を読めば、デジタルの活用方法について詳しく理解できるようになるため、ぜひ読んでみてください。
DX推進とは
DX推進とは、2004年にスウェーデンのウメオ大学教授エリック・ストルターマン氏が提唱した概念で、デジタル技術を活用してビジネスを発展させていくことをいいます。
「デジタルを活用した業務効率化」「企業文化展風土の変革」「新たなビジネスモデルの創出」などが該当し、ビジネスの競争力を強化していく取り組みです。
DX推進が注目される理由
DX推進が注目される理由として「ビジネス競争激化」と「2025年の崖」があります。企業がDX推進に取り組みこれらの問題を解決できるように、経済産業省は「DX推進ガイドライン」を公表しました。
1.ビジネス競争激化
近年、デジタル技術による破壊的なイノベーションが起きており、市場を牽引してきた企業がシェアを奪われるケースが頻発しています。
これまでも、Amazonや楽天のEC事業者の登場により小売事業者が経営破綻したり、NetflixやHuluの動画配信サービスの登場により大手レンタルビデオ店の経営が立ち行かなくなったりすることがありました。
ビジネスにデジタル技術を活用する企業が増えてきているため、DX推進に取り組み、企業競争力を高める必要性に迫られてきているのです。
2.2025年の崖
レガシーシステムを採択している企業は依然と多く、各部門でシステムが構築されており、部門を横断してデータを活用できない状況になっています。
また、自社の業務に合うように複雑なカスタマイズを行っている関係で、システム連携などが容易に行えません。その結果、機能追加やメンテナンス代が高くなってしまうのです。
経済産業省「DXレポート」では、レガシーシステムから脱却できずデジタル化に取り組まなければ、2030年にかけて年間12兆円の経済損失が出てしまうと発表されています。このような問題が出てきてしまうため、システムを見直す必要性に迫られているのです。
DX推進のメリット
DX推進に取り組むメリットは4つあります。
- 業務時間や人件費の削減、ヒューマンエラー防止で生産性が上がる
- 自然災害など危機的状況に陥ったときも被害を最小限に抑えられる
- レガシーシステムのリスクを回避できる
- DX認定企業になれば企業価値が上がり、ビジネスを有利に進めていける(※)
(※)DX認定企業になれば、DX銘柄として投資家から資金調達しやすくなったり、金融機関から融資が受けやすくなったります。また、デジタル技術を上手く活用している企業としてアピールできます。
DX推進のデメリット
DX推進に取り組むデメリットは3つあります。
- DX推進に取り組むには、システム開発費や人件費などのコストが必要となる
- 既存システムから新規システムに移行する際に手間がかかる
- 通常業務と並行してDX推進に取り組まなければいけない
DX推進の取り組み状況
出典元:『DX白書2023』
DXの推進に取り組む企業は増加してきています。IPA独立行政法人 情報処理推進機構『DX白書2023』によると、DXに取り組んでいる企業の割合は69.3%。米国企業のDX推進の実施割合77.9%には及びませんが、さまざまな企業がDX推進に取り組んでいることがわかります。
しかし、日経BP『DXサーベイ2023-2025』によると、DX推進で成果を上げている企業の割合は約3割。2つの調査結果から、DX推進に取り組んでも成果が出ないと悩んでいる企業が多いことがわかります。
DX推進が上手く進まない理由
DX推進で成果を出している企業の割合は約3割と少ないですが、なぜ上手く進まないのでしょうか?ここでは、DX推進が上手く進まない2つの理由をご紹介します。
1.レガシーシステムの採択率が高い
日本企業のレガシーシステムの採択率が高く、DX推進の足枷かせとなっている状況です。
JUAS『企業IT動向調査2020』によると、90%以上の企業がレガシーシステムを抱えています。また、社内のIT予算の76.7%をレガシーシステムの維持・保守に割り当てており、22.3%を機能追加などに割り当てています。そのため、デジタル技術を活用したビジネス変革が上手く行えずにいるのです。
2.IT人材の確保が難しい
出典元:『IT人材育成の状況等について』
DX推進に取り組むためには、IT人材を確保する必要がありますが、採用が難しくなってきています。経済産業省『IT人材育成の状況等について』によると、2030年には最大79万人のIT人材が不足すると記載されています。そのため、各社がIT人材の確保に苦戦している状況です。
この人材不足の問題を解決するために、外国人のエンジニアを採用したり、社員にIT知識を習得させるリスキリングを実施したりする企業が増えてきています。
DX推進の取り組み方
DX推進が上手く進まない理由を説明しましたが、流れを覚えておくことで失敗を防止できます。
≪DX推進の流れ≫
- DX推進の目的を定める
- DX推進体制を構築する
- 社内の現状を把握して計画書を作成する
- DX推進に取り組む
1.DX推進の目的を定める
まずはDX推進の目的を定め、実現したいことを明確にしましょう。なぜなら、目的を定めなければ方針がぶれて失敗に終わってしまうことがあるためです。
■DX推進の目的(参考例)
プロセスを変える |
RPAを活用して事務処理を自動化する 蓄積したデータを活用して意思決定する クラウド上で各社員のナレッジを共有する |
働き方を変える |
テレワークを推進する 従業員満足度を上げるために業務効率化を推進する |
ビジネスモデルを変える |
新規事業を開発する ビジネスモデルを変革する |
2.DX推進体制を構築する
DX推進の目的を定めたら、経営資源(人材、金、情報、時間)を集めてDX推進体制を整えます。DXチームは以下のようなメンバーを揃えて構築しましょう。
ビジネスアーキテクト |
DX企画の立案 |
プロジェクトマネージャー |
プロジェクトの進行管理 |
デザイナー |
システム設計 |
ソフトウェアエンジニア |
システム構築 |
インフラエンジニア |
IT基盤の構築 |
システム開発を外部に委託することも可能です。そのような場合でも、社内で調査をしてビジネスモデルを設計できるビジネスアーキテクトは採用しておきましょう。
3.社内の現状を把握する
DX推進体制を構築したら、社内にDX推進の目的を周知していきます。
DX推進で業務プロセスを変更したい場合は、現場のニーズを聞いて業務効率化できるところを洗い出してデジタル化していきます。そのためにも、業務一覧表とフローチャートを作成しましょう。
(※)ビジネスモデル変革の場合は、競合他社や市場に関する調査を行います。
4.デジタル技術を活用して業務効率化する
DX推進を成功させる秘訣は、スモールスタートです。ペーパーレスや脱ハンコなど気軽に取り組めるものを選んでください。
従業員がデジタルを活用した業務効率化に慣れてきたら、働き方やビジネスモデルを変革していくようにすると、スムーズに進めやすいでしょう。
DX推進に取り組んでいる企業事例
実際にDX推進で業務改革に取り組んでいる企業は、どのような効果を感じているのでしょうか?次にDX推進に取り組んでいる企業事例をご紹介します。
AIを活用した配送業務の効率化(株式会社セブン&アイ・ホールディングス)
出典元:『株式会社セブン&アイ・ホールディングス』
株式会社セブン&アイ・ホールディングスは、セブン-イレブン・ジャパン、イトーヨーカドーなどを傘下に持つ大手総合流通会社です。
運転手の割り振りや、荷物の受け取り場所、時間の最適化を最適化する実証実験に取り組み、宅配事業の業務をAIで効率化しています。また、利用者が複数のサイトを経由して商品を注文しても、同時に配送が可能です。
この実証実験により、配送に必要な車両台数と平均配送距離を約4割に減らせました。
同社は配送業務を効率化するために、外出のついでにセブン-イレブンの店舗で荷物を受け取ったり、不在時には宅配ロッカーを利用したりできる仕組みまで整え始めています。
物流業界のDXについて詳しく知りたい方は、下記の記事をお読みください。
関連記事:『物流DXとは?3つの課題を解決するデジタルテクノロジーを紹介』
店舗作業の効率化に成功(株式会社コックス)
出典元:『株式会社コックス』
イオングループの株式会社コックスは「ikka」「LBC」「VENCE」などのアパレルブランドを持っており、全国で190店舗を運営しているアパレル会社です。
店舗の棚卸作業では、商品1点1点のタグをスキャンしていました。しかし、商品の数が多いため、棚卸し作業は従業員の大きな負担となっていたのです。このような問題を解決するために、RFIDを活用することに決めました。
RFIDを活用すれば、商品タグを一括で読み取れるため、棚卸作業の短縮に成功しました。(※1店舗当たりの作業削減時間:約15.7時間)
店舗の作業時間が削減できた分、スタッフはお客様の接客に割けるようになり、質の高いサービスを提供できるようになったのです。
小売業界のDXについて詳しく知りたい方は、下記の記事をお読みください。
関連記事:『小売業のDXとは?店舗が抱える4つの課題を解決するテクノロジー』
業務時間を年間6,000時間削減(サントリーホールディングス株式会社)
出典元:『サントリーホールディングス株式会社』
サントリーホールディングス株式会社とは、ウイスキーや缶酎ハイなど約500種類の商品開発をしている飲料メーカーです。
同社は商品の需要予測業務の負荷を削減するために、AIの導入を決めました。同社がAIを活用する際には「担当者の業務をAIに代替するのではなく、協業すること」を大切にしています。
担当者が予測したデータ、実績、昨年の売上などをAIに読み込ませて、出力結果から必要に応じて修正するというようにAIを活用しています。
このようなAIの活用方法により、業務時間を年間6,000時間ほど削減することに成功しました。
まとめ
近年、デジタル技術による破壊的なイノベーションが起きており、市場を牽引してきた企業もシェアを奪われつつあることから、DX推進に取り組んで企業競争力を高める動きが出てきています。
DXはスモールスタートで、慣れてきたら徐々に業務改革など大きなことを手掛けるようにすることが成功の秘訣です。この記事を参考にしながら、ぜひ、DX推進に取り組んでみてください。